事故の真相を解く鍵は、生存者の手記とコックピット内のボイスレコーダーにある。


後部圧力隔壁は破損していない

1985年8月12日に起きた羽田発大坂行きJAL123便の墜落事故は、自衛隊機によって撃墜されたとか、米軍のトマホークで垂直尾翼が破壊されたとか、陰謀論めいた話が出回っています。

確かに、垂直尾翼が失われたのは、後部圧力隔壁の破損ではありません。これは、生存者の1人である落合由美さんの証言でも明らかです。後部圧力隔壁の破損による機内の急減圧が起きていないからです。


「緊急降下中といっても、体に感じるような急激な降下はありませんでした。急減圧のとき、酸素マスクがおちてくることは、もちろん知っていました。急減圧は何かがぶつかったり、衝撃があって、機体が壊れたときに起きると教わっていましたから、そういうことが起きたのだな、と考えたのですが・・・」(吉岡忍著「墜落の夏」新潮社より引用)

123便は、異常音のあと、自動で酸素マスクが下りてきて、自動アナウンスが機内に流れます。しかし、落合さんは、10分後に酸素マスクを外しても息苦しさはなかったと証言しています。

「パーン」という音から、たぶん10分くらいしてからのように思います。このころになって、酸素マスクをはずしてみても、苦しさは感じませんでした。ただ、ほとんどのお客様がマスクをしていましたが。


酸素マスクが降りるのは急減圧が起きたときと落合さんが考えたように、コックピット内の機長も急減圧の原因を考えています。

ボイスレコーダー

18時24分35秒 「ドーン」というような音
18時24分36秒 「ドーン」というような音
18時24分37秒 【客室高度警報音 又は 離陸警報音】
18時24分38秒 (? ) ・・・
18時24分39秒 (CAP) なにかぶつかったぞ(なにか爆発したぞ)
18時24分42秒 (CAP) スコーク77
18時24分43秒 (COP) ギアドア (CAP) ギアみて ギア
18時24分44秒 (F/E) えっ (CAP) ギアみてギア     
18時24分46秒 (CAP) エンジン?
18時24分47秒 (COP) スコーク77
18時24分48秒 (F/E) ボディ・ギヤ(オールエンジン)
*( )内は事故報告書の記載。記載内容の相違については、下記動画を参照


機長が「ギヤみてギヤ」との指示に航空機関士が「ボディギヤ」と答えています。

123便は、両主翼の下に各1基、胴体の下に2基の車輪を付けていて、飛行中は格納されています。飛行中に格納扉が開くと機内では急減圧が生じます。

酸素マスクが降りたり、機内に白いガス(水蒸気)が充満したのは、胴体したの車輪の格納扉が開いたのが原因で、操縦士らはその原因を確認しています。

これらから、機内は、胴体の車輪の格納扉が開き一時的に急減圧を起こしたが、その後の機内の気圧は保たれていた。つまり、後部圧力隔壁は正常に機能していたと考えられるのです。

16時34分ごろの高度は、21400フィート、高度約6500メートル。与圧が必要な高度です。

つまり、後部圧力隔壁は100%破損していないということです。

2011年7月、この問題にたいして、国土交通省の運輸安全委員会が追加の報告書で答えていますが、その答えは、「事故機の機内は緩やかに減圧しているので、一般的な急減圧の症状はでない。が、急激な減圧はおきていた。」というものです。

報告書の基準のケースと緩やかな減圧時のケースとの間の範囲に入っています。つまり、事故機で発生した機内の現象は、この急減圧事例と似通った状況にあったと考えるのが妥当です。また、この状況は、生存者の証言とも一致しています。

運輸安全委員会は、16時34分ごろ落合証言をどのように考えるのでしょうか。高度6500mの機内で与圧なしで正常は呼吸ができるのでしょうか?。

これは想像ですが、急減圧時の酸素マスクの降下などのセンサーはどこにあるのでしょうか。後部圧力隔壁のそばだとしたならば、垂直尾翼への衝撃で反応することはないのでしょうか。

また、コックピット内でも機長以下2名の乗員は酸素マスクを付けずに事故に対応しています。操縦士らが20,000フィート以上の高度を酸素マスクを使用しなかったことについて、運輸安全委員会が追加の報告書で、下記の要因をあげています。


同機の急減圧の程度であれば操縦操作を優先した。
操作に専念して酸素マスクを着ける余裕がなかった。
既に低酸素症を発症しており正常な判断ができなかった。

結果的には、低酸素症による影響と読み取れるのですが断定はしていません。

どうでしょうか。どのように解釈しても、123便の後部圧力隔壁は破損していないと断定せざるを得ないのではないでしょうか。

2013/12/11改稿