事故の真相を解く鍵は、生存者の手記とコックピット内のボイスレコーダーにある。


生存者は多数いたのに救助しなかった?

着陸時の状況は、落合由美さんの証言でわかります。あえて着陸というのは多数の生存者がいたからです。

衝撃がありました。衝撃は一度感じただけです。(中略)墜落の直後に、「はあはあ」という荒い息遣いが聞こえました。ひとりではなく、何人もの息遣いです。そこらじゅうから聞こえてきました。まわりの全体からです。 「おかあさーん」と呼ぶ男の子の声もしました。


そう、あの絶望的な状況の中で、結果論ですが、本来ならば山腹に激突して乗員の全員が死亡する状況で生存者がいたのです。

生存者の一人の落合由美さんの証言は、墜落後の現場の様子が時系列にとてもよくまとめらています。彼女の証言で私が注目するのは、墜落後のあたりが暗くなったときに、若い女の人の「早くきて」という声のところです。


どこからか、若い女の人の声で、「早くきて」と言っているのがはっきり聞こえました。あたりには荒い息遣いで「はあはあ」といっているのがわかりました。まだ何人もの息遣いです。


「早くきて」というのは、誰かがそこにいたことを示しています。つまり、墜落後に現場に入った人間がいるということです。それは自衛官だと思います。


それからまた、どれほどの時間が過ぎたのかわかりません。意識がときどき薄れたようになるのです。寒くはありません。体はむしろ熱く感じていました。私はときどき頭の上の隙間から右手を伸ばして、冷たい空気にあたりました。 突然、男の子の声がしました。「ようし、ぼくはがんばるぞ」と、男の子は言いました。学校へあがったかどうかの男の子の声で、それははっきり聞こえました。さかし、さっき「おかあさーん」と言った男の子と同じ少年なのかどうか、判断はつきません。