"Imagine"


 ジョン・レノンの"Imagine"の、「天国も地獄もない、国家も宗教もなく、欲望も飢餓もない、そんな世界を望む僕は、夢想家なのだろうか」と言う、平和へのメッセージは、いまも世界中の人々に歌い語り継がれている。

 2001年の、WTCビル崩壊事件(私は、9.11テロ事件とは言わない)で、"Imagine"を歌ったアメリカ国民が、アフガニスタンにトマホークを打ち込み、超大型燃料気化爆弾を落とし、イラクに対しても、命中精度を無視したミサイル攻撃によるジェノサイドを行った。

 そして、アメリカの押し付ける「自由」と「民主主義」は、イスラムの人々に対する服従への踏絵となっている。この踏絵は、イスラムの人々の憎悪と怒りとなり、絶対的な絶望感とともに若いアメリカ兵に向けられている。

 アフガニスタンやイラクの人々は、"Imagine"を知っているだろうか。アメリカを憎悪するアルカイーダなどのテロ組織に、ジョン・レノンのメッセージはどのように伝わるのだろうか。

 ジョン・レノンは、天国も地獄もない、国家も宗教もなく、欲望も飢餓もない、そんな世界を求めていたのではないと、私は思う。そうであるから、あえて"You may say I'm a dreamer"と問いかけたのではないだろうか。

 国家、宗教、所有欲、差別は、人間が動物である限り、なくならない。これを否定するのならば、動物という生命体を否定しなければならない。しかし、動物であるが故に、地球がなくては生きていけないのであり、子孫を残すという動物の本能は、戦争という行為を否定するだろう。

 「国家、宗教、所有欲、差別を受け入れて、戦争を否定する」この命題に取り組むことが、人間に託されていると、ジョン・レノンは語りたかったのではないだろうか。

 かつて領土拡大を求めた戦争の時代は終わり、資本主義か社会主義かというイデオロギーを争う時代も終わった。資本主義を否定した社会主義は、利権を制御できず、経済格差による貧困層に否定された。現代は、カジノ資本主義経済である世界の中の、経済格差が紛争の原因であり、権力は、国家、宗教で差別化して、経済格差の対極にいる貧困層をテロと決め付けて、そして弾圧することを、戦争と称している。

 絶対的な貧困層が、武器もなく生存権をかけて権力に立ち向かう時、自爆という悲惨な行為を、どうしてテロと呼べようか。絶対的な貧困層に、近代兵器で無差別に殺戮することを何故ジェノサイドと言わないのだろうか。もともとの命中精度を無視したミサイル攻撃を"誤爆"などという表現を、何故、世界は非難しないのだろうか。

 太平洋戦争で無謀な戦争に駆り出された旧日本軍の特攻攻撃で死んでいった若者と、絶望的な貧困の中で、民族の生存権をかけて自爆するイスラムの若者の違いは、後者は、それが日常的な生活から生まれるということだ。我々日本人は、この両者の違いを理解するべきだし、その違いを世界にアピールするべきではないだろうか。

 いま、世界の指導者に求められているのは、戦争を否定することでも、"Imagine"を歌うことでもない。資本主義の原理を離れて、実体経済を離れ、資本の寡占化を求めるカジノ資本主義が生み出す、絶対的な経済格差を否定することだ。資本の寡占化と絶対的な貧困層は対極化して、両者の溝は、憎悪で埋め尽くされている。

 実体経済を離れ、資本の寡占化を求めるカジノ資本主義を否定する行動が、反グローバリズムなのだ。資本の寡占化を排除し、資本の分散を求めるべきであり、それが、経済格差を拡大から縮小に向かわせていく。絶対的な貧困層をなくすことが、人類に求められている命題なのだ。

 キーワードは経済格差であり、それは資本主義にその糸口が隠されている。そのためにも、いまのカジノ資本主義を否定しなければならず、アメリカはその障害である。

 宗教でもなく、イデオロギーでもない。「国家、宗教、所有欲、差別を受け入れて、戦争を否定する」この命題こそが、平和を願うジョン・レノンのメッセージではないだろうか。そして、この命題を導くものが、経済であり、資本主義の原点に立ち返ることではないだろうか。資本主義は、民主主義と共存できる経済システムであることを、理解してほしい。原理資本主義は経済格差を是正する機能がある。

 カジノ資本主義に代わる経済社会は、資本主義の原理に立ち返り、厳しい市場経済であるけれども、誰でも参加できる自由とルールの確立した資本主義経済を構築するべきだろう。そして、経済には、公需と民需が共存するということを受け入れ、社会資本の蓄積が、国民に還元できる社会を目指すべきなのだ。

 そして、公需と民需のバランスが、経済と民主主義を健全化するものであるとする、原理資本主義が、資本の分散を実現し、経済格差をなくし、絶対的な貧困層をなくすことができる。

2003年1月1日

橋本 昌雅

第一章 原理資本主義

第二章 時代が加速している21世紀

第三章 ベルリンの壁の崩壊から学ぶ経済のあり方

第四章 日本経済を考える

第五章 日本経済の迷走の原因は「企業の再生」にある

第六章 新日本列島改造論

第七章 担保主義に代わる金融システムの提言

第八章 経済の元凶である退職金と年金制度

第九章 政権交代の主役は国民である

第十章 永田町に競争主義の導入を

第十一章 政策提言

著者からのメッセージ

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