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蒸気発生器=ガス拡散筒ユニット


2012年、ロサンゼルスの南東約130kmに位置するサンオノフレ原子力発電所の2号機と3号機で、三菱重工業製の「蒸気発生器」がトラブルが発生した。このトラブルで、サンオノフレ原子力発電所の原子炉は廃炉となり、2015年に9300億円の訴訟が起こされている。

この事故の前年に、日本では地震により福島第一原発が稼働停止になっていて、濃縮ウランの製造(準国産エネルギー)が停止している。

日本は濃縮ウランのOEM生産工場だった。

米国のユーセック(USEC)社は、2001年にオハイオ州ポーツマス工場のガス拡散法による濃縮ウラン製造施設を停止して、遠心分離法を用いた新たなウラン濃縮工場を2013年に稼働する計画していた。

表向きは、ケンタッキー州パデューカのガス拡散法の工場で年間約6,000tSWU/年のウラン濃縮を行うとしていたが、この生産は、日本の電力会社にOEM生産を委託していた。

日本の福島第一原発では、原子力発電による電気を利用して、ガス拡散法による濃縮ウラン製造の技術が確立されていた。ガス拡散法のよる濃縮ウランの製造施設は、原子炉内に拡散筒のユニットを組み込まれていて、外見上は原子力発電所の施設である。

この原子炉内に組み込むガス拡散筒のユニットが、サンオノフレ原子力発電所の2号機と3号機ででトラブルを起こした「蒸気発生器」である。つまり、「蒸気発生器」=ガス拡散筒のユニットなのである。

国内から国外での濃縮ウラン生産への転換


2011年の日本の東北地方を襲った地震で、米国のユーセック(USEC)社は、日本の電力会社からの濃縮ウランの調達ができなくなった。

日本政府は、国内の原発の再稼働を急ぐとともに、海外での民間原発施設を利用して濃縮ウランの製造を働きかけた。

2006年、日本の核燃料サイクル開発機構は、ガス拡散法でウランとプルトニウムを取り出す特許技術(特開2006-46967)を取得。同年には東芝が、米国の原子力発電装置のウェスティングハウスを買収し、2010年には、濃縮ウランの供給権を求めて、ユーセック(USEC)社に約1億ドル(約102億円)の出資をしている。

日本政府は、米国のユーセック(USEC)社への濃縮ウランの供給のために、海外の原発施設での濃縮ウラン生産を決めたが、サンオノフレ原子力発電所でのトラブルで頓挫した。この状況で、2014年に米国のユーセック(USEC)社は倒産。

ユーセックの売掛債権=架空売上=粉飾決算の構図


東芝は、日本国内の原発再稼働で生産された濃縮ウランをユーセック(USEC)社に準国産エネルギーとして納入していたが、倒産によって売掛金が未回収となった。

しかし、表向き濃縮ウランの生産をしていたとはいえないので、この売掛債権が、架空売上となり 粉飾決算となったのである。

日本国内の原発で生産された濃縮ウランは、再建中のユーセック(USEC)には流せない。それどころか、過去納入にさかのぼって架空売上されたために、7000億円の債務超過となったのである。

また、海外の原子力発電プラントを経由して濃縮ウランを生産するにも、ウェスティングハウスの子会社の原発建設会社S&Wは、直近で5基の原発プラントを稼働する予定だが、、冒頭の三菱重工社の訴訟問題を受けて、事故後のリスクを負うS&Wは、訴訟を起こして、その責任を親会社のウェスティングハウスが負うべきと勝訴した。

この事態を受けて、東芝は完全に行き詰まった。

日本の原発が濃縮ウランの製造プラントを公表するべき


この事態を乗り越えるには、日本の原発が濃縮ウランの製造プラントであることを公表するしかないだろう。

トランプ大統領の登場によって、グローバリズムからナショナリズムへの政治転換が行われている中で、過去の政治的背景を一切無視するトランプは、日本の原発での濃縮ウラン生産を隠すことはないだろう。だから、昨年末に、安部はあわててトランプに会いにいったのだ。過去の自民党の嘘まみれの政治が明るみになるのを恐れたのだ。

トランプは、ユーセック(USEC)社の倒産の責任を、東芝の倒産で手を打つとは思えない。トランプは、日本の核燃料サイクル開発機構が持つ、ガス拡散法でウランとプルトニウムを取り出す特許技術(特開2006-46967)の無償提供を要求してくるだろう。もちろん、日本での濃縮ウラン生産の公表を前提としてだ。

2017/1/28 記

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