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非常用復水器の撤去が意味するもの

非常用復水器の撤去は、原子炉を使ってウラン濃縮をしていたことを意味する


事故後、民主党の原口一博議員らが、非常用復水器の撤去への問題定義していたが、福島原子力発電所事故調査報告書では、非常用復水器の撤去の経緯にたいする解明は行われたのだろうか。

問題は、非常用復水器の撤去がされた経緯ではなく、その理由だ。それは、現場でたびたび非常用復水器の警報がなっていたため、その都度警報を解除するという作業をしていたという現場の状況を聴き取り調査するべきなのだ。

原子炉を稼動していないときに、炉内の温度があがると非常用復水器の作動警報が鳴る。作業員はその都度警報を解除する。問題は、通常であれば、原子炉は制御棒で核分裂を制御して、冷温停止状態にして原子炉は停止する。

この状態で炉内の温度が上がることは即臨界を意味する。従って、この状況での非常用復水器の作動警報は致命的な事故となるが、現実には、日常的に警報が鳴っているのだ。

しかし、原子炉を違う目的で使うと考えると、この疑問の答えが出てくる。つまり、原子炉を利用したウラン濃縮である。これはガス拡散法といわれるウラン濃縮の技術であり、濃縮工程の過程で熱が発生し、原子炉内の水が沸騰し、非常用復水器の作動警報が鳴ると考えるのである。

原子炉を、ガス拡散筒の冷却に使う場合、炉内の水が沸騰するのは当然で、それを感知して警報が鳴り、そのまま非常用復水器が作動するれば、冷却水として貯めこんでいる海水が原子炉内に入ってしまう。

日本の原子力発電所では、原子炉を利用したガス拡散法によるウラン濃縮が行われていて、この作業時には、非常用復水器の警報の作動と解除は、通常の作業として組み込まれていたのであろう。現場としては、取り外したいと考えるのは当然である。

2003年に、この非常用復水器が15億円かけて撤去された。その理由は、ウラン濃縮の生産の増強を意味する。ガス拡散法にウラン濃縮の生産拡大は、2006年2月に公開された特許技術がその背景にある。

特開2006−46967の出願者は核燃料サイクル機構で、使用済み核燃料に、フッ素またはフッ素化合物を作用させ、ウラン及びプルトニウムの混合六フッ化ガスを生成して、ウランとプルトニウムを抽出するという技術である。

濃縮ウランは、六フッ化ウランをガス状にして、ガス拡散法や遠心分離法でウラン235と238を分離しているが、黒鉛炉で取り出されるプルトニウムと違い、軽水炉ではプルトニウムの抽出は難しいとされていた。

しかし、軽水炉発電で水に溶けた六フッ化ウランと六フッ化プルトニウムを混合六フッ化ガス化することができれば、従来のガス拡散法や遠心分離機で、濃縮ウランと濃縮プルトニウムが抽出できる。

この特許技術の公開後、日本の商用原子炉でのプルサーマル化と称するMOX燃料の使用が始まるのであるが、MOX燃料による原子炉の運転はダミーであり、実際には、軽水炉の使用済み核燃料を、六フッ化ウランと六フッ化プルトニウムに転換するのが狙いであろう。つまり、ウランの濃縮だけではなく、プルトニウムの濃縮も、従来のガス拡散法で行うということを意味していると思われる。

チェルノブイリの事故も、ウラン濃縮作業中の事故であり、この事故の直接的原因は地震である。福島第一原発の1号機は水素爆発であるが、3号機は地震でガス拡散筒が干渉し、ガンバレル型の核爆発がおきたか、、もしくは、カスケード内のプルトニウムが、水蒸気爆発でインプロージョン型の核爆発を起こしたのであり、核爆発である。

日本の原子力発電所は、ウラン濃縮プラントであるということを理解しないと、原発や電力に関する議論は無意味だ。

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