JOC臨界事故は六フッ化ウラン転換中の事故だ

1 JOCは六フッ化ウランの転換施設


1999年9月30日、茨城県那珂郡東海村の株式会社ジェーシーオー(以下JOCとする)の核燃料再転換処理施設で臨界事故が起きた。

この臨界事故を引き起こした施設は、原子力委員会に対して「転換試験棟の化学処理施設は六フッ化ウラン、スクラップ又は、イエローケーキから酸化ウラン粉末又は硝酸ウラニル溶液を製造するものである。」と、許可申請を行っている。言い換えると以下のようになる。

1 転換試験棟の化学処理施設は、六フッ化ウランを製造するものである
2 転換試験棟の化学処理施設は、イエローケーキから酸化ウラン粉末又は硝酸ウラニル溶液を製造するものである

2 臨界は六フッ化ウランの転換工程で起きた


臨界事故は、ウラン原料であるイエローケーキから硝酸ウラニル溶液にする過程でおきたとされるが、先の申請書類には、硝酸ウラニル溶液製品の製造方法が何ら記載されていない。

本事故の原因は、旧動燃が発注した高速増殖炉の研究炉「常陽」用核燃料の製造工程でいきたとされているが、核燃料棒に装填される二酸化ウランのペレットは、ウラン濃度が3%から5%の六フッ化ウランを転換した濃縮二酸化ウランであり、六フッ化ウランや、イエローケーキから作られるものではない。

核燃料のサイクルは以下の通りである。

1 天然ウランを精錬しウラン精鉱(イエローケーキ)をつくる。
2 ウラン精鉱(イエローケーキ)を八酸化三ウランに精錬したあと、転換して六フッ化ウランをつくる。
3 六フッ化ウランにウラン濃度を3%から5%に濃縮した六フッ化ウランにする。
4 濃縮された六フッ化ウランを濃縮二酸化ウランに転換する。
5 濃縮二酸化ウランをペレット状にして核燃料棒に装填する。

1の工程をウランの粗製といい、2の工程をウランの転換という。3の工程はウラン濃縮といって、ウランの転換と濃縮は、核拡散条約によって規制されていて、日本にはどちらの施設もないことになっている。しかし、日本はウラン精鉱を輸入して、原子力発電の燃料棒の製造を、八酸化三ウランの転換からはじめている。

つまり、日本には、六フッ化ウランの転換施設と、ウラン濃縮施設があることを意味していて、JOCの核燃料再転換処理施設とは六フッ化ウランの転換施設であったことは明白だ。

JOCの臨界事故は、、ウランの転換工程で臨界が起きて、しかも、核分裂を制御できる原子炉外での臨界事故であったということである。

3 世界は日本のウラン濃縮施設の存在を認めるだろうか


2012年、核開発問題でアメリカから圧力を受けているイランが、イラン国内の六フッ化ウランの転換施設、友人である日本のメデァイだけに公開した。

日本は、濃縮ウラン事業国として登録はされているが、六ヶ所村の遠心分離プラントはトラブル続きで稼動停止中であり、原子力発電の燃料となる低濃縮ウランはアメリカから輸入していて、濃縮前の六フッ化ウランは必要なく、その設備もないとされている。

しかし、ウラン精鉱を輸入し、核燃料再転換処理施設で六フッ化ウランを生産していたのであり、しかも、前代未聞の臨界事故まで起こしていた。

日本の原子力発電所には、核燃料サイクルが一貫して行われているのが現実であり、ウラン濃縮は、ガス拡散法によって生産されている。ガス拡散法な巨大な電力を消費するので、原子力発電をしながらウラン濃縮をする必要がある。だから、日本の原子力炉の設備稼働率は低いのであり、電力の需給能力など関係なく再稼動しなけれなならないのだ。